
歳を取ると身体にさまざまな不調が現れやすくなります。加齢による心身の活力の低下は認知機能の低下や摂食機能の低下などを引き起こすため、できることなら予防したいものです。よく聞く「フレイル」も加齢が原因で起きる症状ですが、具体的にどのようなものなのでしょうか。予防法や対策についてもくわしく解説していきます。
フレイルって何?
加齢によって体力・気力ともに低下している健康状態のことを「フレイル」といいます。フレイル状態になるとさまざまな病気を併発しやすくなったり、危険なケースでは死亡率が上昇する可能性もあります。病気ではないため診断がつきにくく気づきにくいのですが、歩くことや食べることなど日常に必要な動作をするための筋力や体力が衰えてしまう身体的な症状がわかりやすい例です。しかし、フレイルは心の健康にも大きく関係しています。
家族や友人など他者との交流機会が減少することで社会的孤立を感じやすくなったり閉じこもりがちになることを社会的フレイル、環境の変化やパートナーとの死別などによる精神的なストレスが引き金となって起こる鬱状態や無気力、記憶力や認知機能が低下することで日常生活に支障をきたす「精神・心理的フレイル」もあります。
フレイルの原因はひとつとは限らず、肉体面や精神面、社会的な側面が複雑に絡み合って大きな影響を及ぼしているケースも多くみられます。フレイル状態になると何も楽しくない状態が続いたり、家族や友人に迷惑をかけたくないと自ら心を閉ざしたり、さまざまな弊害を引き起こすのです。
心と体は密接な関係にあることから、精神的な不調から身体的な不調を招くこともあります。自分ではすぐに気づきにくいのもまた、フレイルの特徴です。
フレイルの原因を知っておこう!
フレイルはこれといったひとつの原因から陥るというより、さまざまな要因が積み重なったり心身に悪影響を及ぼすことで悪循環を引き起こす可能性が高まります。人は歳を重ねるごとに体力の低下や運動量の減少、筋力低下などの問題に直面しやすくなります。生活習慣病や栄養不足などによる体重減少や食欲不振による体力の低下などもフレイルの原因になります。身体的な要因だけではなく、ストレスや気分の落ち込みが続くことによる精神・心理的要因もフレイルのきっかけになることが多いようです。
高齢になると定年退職や大切な人との死別など精神的・心理的に負担が大きいライブイベントを迎える機会が増えてしまいます。
それらによって気分が落ち込むと、最悪のケースでは不安や鬱状態が続いたり物忘れが多くなったりしてしまいます。身体機能の低下に加えて認知機能の低下がみられる場合、認知的フレイルに分類されることもあります。
他者とのつながりを奪われることで孤独を感じやすくなったり孤立状態になる社会的フレイルは、人や地域との関わりがなくなることで落ち込みやすくなってしまいます。周囲との積極的な関わりを失ううちに、自分は社会に必要のない存在だと思い込んでしまうこともあります。
フレイルの予防に必要な対策とは
フレイルの予防にはまず生活リズムをしっかりと整え、バランスのよい食生活を送ることが効果的です。1日の適切なエネルギー量を摂取することに加えて、主食、主菜、副菜、乳製品、果物などをバランスよく食べることが大切です。たんぱく質を意識することも忘れないようにしましょう。いつまでも食事を楽しめるようにしっかりと歯のケアを行い、口腔の健康を保つことも重要です。噛む力や飲み込む力が衰えてしまうと食事を楽しめなくなり、結果的に栄養不足や体重減少にもつながってしまうためです。
積極的に歯磨きをするだけではなく、定期的に歯科医院に通うこともおすすめです。糖尿病や高血圧、呼吸器疾患などの持病や慢性疾患がある場合にはうまくコントロールすることも大切です。
持病が悪化してしまうと何もやる気になれず、食事も運動もする気になれないといった事態になりかねません。次に、たくさん歩いたり負荷の軽い筋力トレーニングを取り入れることでフレイルを予防することができます。
無理のない範囲で運動を取り入れることは、身体的フレイルのリスクを低減することに繋がります。適度な運動はストレス発散にもなり、精神・心理的フレイルの予防にも効果を発揮します。
また、気分の落ち込みを防ぐためにも趣味に打ち込むことやボランティア活動に積極的に参加するなど、社会とのつながりを意識した活動をすることも大切です。社会参加は精神的な活力になるだけではなく、認知機能の低下も予防することができます。
外出や交流をできるだけ心がけましょう。ストレスを溜めずにゆったりと過ごしたり、楽しい時間を過ごすなど、身体だけではなく心の健康を維持することも重要です。気になる症状やいつもと違った様子など、周囲が気にかけてあげることも大切です。